Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
ロシア文豪の血を引くヴォーカリスト
2007年12月21日
ヴィクトリア・トルストイがデビューした時、大きな話題になったのはロシアの文豪トルストイの末裔だということだった。その後は一部の輸入盤ウォッチャーやヴォーカル・ファンから注目を得ている存在に甘んじていたが、そんなトルストイがヤコブ・カールソン・トリオと共に来日公演を行った。会場は横浜の関内小ホール。スウディッシュ・ジャズのコアなファンが集った趣だったが、意外に思ったのは若い女性ファンが少なくなかったことだ。最初にインスト・パートを演じたカールソンは、リーダー作『Big Five』で素晴らしい演奏を聴かせてくれて、ピアノ好きの間で株を高めた。この日も持てる力を存分に発揮。CDで知っていたのと違わぬ演奏で、実力者ぶりをアピールした。「ウィール・ビー・トゥゲザー・アゲイン」「ブレイム・イット・オン・マイ・ユース」等のスタンダードを中心に選曲したトルストイも、あますところなく歌唱力を披露し、観客を魅了。スウェーデン語でのクリスマス・ソングで、遠い北欧情緒を伝えてくれたのも一興だった。先頃来日したマルガリータと並ぶスウェディッシュ・ヴォーカルの実力者であることを再認識してくれた夜となった。