Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
邦人ピアニストの画期的なホール・コンサート
2007年12月09日
今年の上原ひろみは大活躍、著しい飛躍の年となった。年初にはヒロミズ・ソニック・ブルームの新作『タイム・コントロール』をリリース。9月には1年ぶりとなるチック・コリアとの再会ステージを「ブルーノート東京」で実現。その間は世界各国でステイタスを高めるなど、今や新世代邦人女性ピアニストでは別格的なポジションを築いている。今夜は「東京国際フォーラム・ホールA」でのコンサートを観た。5000人収容のこのホールで単独公演を行うほど集客力があるジャズ・アーティストは、他に綾戸智恵しかいない。いかに凄いことかわかると思う。ジャズの枠を超えてメディアに露出し、ロック系フェスにも出演してファンを増やしてきたことが、ここに実を結んだと言えよう。同作と同じ4人組でステージに登場した上原は、オープニング・ナンバーから飛ばす。ところが演奏が終わった後のMCで、感極まって涙声になってしまう。満員の客席に感動したよう。上原は1年前の「東京JAZZ」で同じステージに立っているが、単独公演ということでまた違う感動がこみ上げてきたのだろう。思わず「日本大好き!」と叫んだのは、各国で演奏してきた上原が、母国の観客ならではの温かさを感じたから。バンドは益々結束力が固まった姿を印象づけた。さらに特筆したいのはデヴィッド・フュージンスキー。エキセントリックなギタリストというイメージがあったのだが、実はしっかりとしたテクニックに裏打ちされた男だと納得。後半では観客を煽って、クライマックスへとつなげる役割を演じたのもフュージンスキー効果だった。休憩をはさんで3時間とは、おそらく過去最長。しかし長さをまったく感じさせなかったあたり、上原の集中力が観客と同期していたからに他ならない。終演後バックステージでひろみちゃんとハグ。年明けにはこのメンバーでスタジオ・レコーディングに入るとのこと。来年も間違いなく活躍してくれるはずだ。