Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
邦人新人歌手の記念ステージ
2007年11月21日
北浪良佳という若手女性シンガーは、デビュー作『リトル・ガール・ブルー』の先行サンプルCDを聴いて興味を持っていた。スタンダード・ナンバーを中心としながら、大貫妙子、武満徹などジャズ以外の楽曲も取り上げたプログラムは、近年続々とデビューしているジャズ・ヴォーカル・シーンで個性を際立たせることができると感じたからである。今夜は「モーション・ブルー・ヨコハマ」でのライヴを初体験した。まずバンドのみによる「ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ」でスタート。北浪がステージに登場すると、ルイ・アームストロングで有名な「この素晴らしき世界」を歌唱。フェイクやスキャットを交え、歌いながらメンバー紹介するスタイルは、ダイアン・リーヴスを想起させるものだ。個人的に気に入っていた「色彩都市」はプロデューサー兼ピアニストの石井彰の提案によるもの。最初本人は最初?だったそうだが、今夜の歌唱を聴くとプロデューサーの選曲眼が正しかったとわかった。北浪は元々オペラ歌手だった人で、「モナ・リザ」「アマポーラ」といった非ジャズ曲で持ち味を発揮したことが、彼女の現在を物語っている。フェイクやスキャットがジャズ的スリルを生み出すに至っていない現在のスキルは、ジャズ・ヴォーカリストとしての基礎の精進が求められていることを浮き彫りにした。MCはきちんとした日本語で良い人柄を示し、ルックスの魅力も持っているので、今後に期待したい。