Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
トップ・ベーシストの要注目ステージ
2007年10月25日
デイヴ・ホランド・クインテット@ブルーノート東京。欧米の専門家筋でも非常に高い評価を得ている、当代最高峰のベーシストが率いるバンドのクラブ・ライヴである。見どころは多々あって、サックスのクリス・ポッターはコンボとウィズ・ストリングスの新作2タイトルを同時リリース。トロンボーンのロビン・ユーバンクスはユニークなエレクトリック・トリオによるCD+DVD作を今年リリースした。旬のミュージシャンを擁した点でも、玄人筋だったら絶対に見逃せないステージだ。注目ポイントは1曲から早くも訪れた。ドラムスとの小節交換が通例とは異なり、ドラムス対4人のアンサンブルという図式を呈したのだ。これはサウンド的な面白さを現出したばかりでなく、バンド・メンバーの親和性をもアピールしたのが収穫。若き巨匠の風格も漂わせるポッターは、一点を見つめたテナー・ブロウで実力者ぶりを体感させてくれた。ポッターのレギュラー・バンドのメンバーでもあるネイト・スミスは、若手黒人ドラマーの注目株と呼ぶべき地金の強さを実証。近年の流れとして人材層の厚さを増す米国黒人のトレンドを再認識した。アンコールを含めた1時間半のステージは、現代ジャズ・シーンにおけるこのユニットの重要性を浮き彫りにしたのだった。