Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
JazzToday 第3夜
2007年10月17日
劇場公開から1ヶ月以上経った映画『HERO』を、六本木ヒルズで観た。興行的にも大ヒットを記録しているこの作品は、結末がどのメディアでも明かされていなかった。観ながら巧みな脚本に感心しつつ、ラスト・シーンに思わず溜め息。松たか子の好演が印象的だった。
「スイートベイジルSTB139」での3日目。今夜は「Elegies,Touches,Songs of JazzToday」と題し、2組が出演した。ファースト・セットは津上研太(as,ss)がリーダー格のカルテット=BOZO。メンバーのオリジナル曲を中心としたステージは、約束事を踏まえた上での自由なサウンドを追求するメンバーの姿勢が伝わってきた。循環呼吸法を使用した津上の演奏は、ウエイン・ショーターを想起させるもの。一見4人ががっちりと結束している風ではないのに、彼らならではのサウンドを表出するのがBOZOたるゆえんなのだろう。インターミッションに入ってしばらくすると突如、菊地成孔がステージに登場。セカンド・セットに行われる南博のトリオに弦楽四重奏が加わったバンドについて、コメントを発した。菊地は南の同コンセプト作『タッチズ&ヴェルヴェッツ』『エレジー』の2枚のプロデューサーでもある。饒舌なMCによって会場が温まったところでミュージシャンが揃った。「Bマイナー・ワルツ」「マイ・フーリッシュ・ハート」の選曲はビル・エヴァンスへのシンパシーの表明であり、アナザー・サイド・オブ南博と言えるだろう。以前、南にインタビューした時に知ったのは、中学生時代に不登校だったこと。曲間のマイクでも笑いを取るようなコメントを発していたが、根はシャイな人柄なのではないか。アンコールはトリオだけで、それまでの雰囲気を変えたアグレッシヴな姿勢で「ソーラー」をプレイ。冗漫にならないプログラムにも好感を抱いた。