Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
ドイツの人気ピアニストが日本ツアーの最終公演に登場
2007年07月06日
2005年リリース作『ザ・サウンド・オブ・レインボー』でECMレコードへの並々ならぬシンパシーを表明したドイツ人ピアニストのウォルター・ラングが、恒例のジャパン・ツアーを行った。今夜は新作『ロマンチック街道の彼方』のリリース直後という、タイミングのいいライヴである。メンバーは長年安定しているニコラス・タイズ(b)、リック・ホランダー (ds)とのトリオだ。ラングは80年代にホランダーのグループに起用されたことがきっかけとなって、ジャズ界に進出した経緯がある。今夜のステージは新旧のレパートリーを取り混ぜたプログラムとなった。
ファースト・セットでは驚きの場面が散見できた。
「ぼくが曲名を言わなくてもわかると思う」と言って始めた「リンゴ追分」はモーダルでスピリチュアルなアレンジが新鮮。ビートルズ『アビー・ロード』収録曲「ビコーズ」は、大胆なアップ・テンポで、昨年発売の別プロジェクト“エルフ”を連想させる演奏を披露した。つまり2つの異なるトリオ・プロジェクトの境界線があいまいになったのが、当夜の最大の収穫であり、ラングがミュージシャンとして成長している姿が確認できたのもファンには嬉しいこととなった。終演後に話しをしたところ、帰国後にELFトリオの新作のレコーディングを行うとのこと。楽しみである。