Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
地中海音楽の夕べ 第一夜
2007年06月01日
イタリア音楽の伝統を継承した同国中・南部を代表するグループを日本に紹介するシリーズ・コンサート。その第2弾として発表されていたのが先週の今日に開催される予定だったダニエーレ・セーペだが、本人の体調不良により中止となった。本シリーズでは最も期待していたアーティストだっただけに残念である。今夜はテノーレス・ディ・ビッティ“ミアリーヌ・ピーラ”を九段・イタリア文化会館で観た。テノーレスは1995年に結成された4人組のヴォーカル・ユニットで、サルデーニャを本拠に各国の音楽祭やコンサートにも出演。
同地の最も古い民族音楽の表現形式であるカント・ア・テノーレの歌い手であり、独特の発声を持つのが特徴となっている。通常ヴォーカル・グループはステージに4本のマイクを立てて、4人が横一線に並んで客席に向かって歌うものだが、テノーレスは半円形の陣を組んで歌うのが独特。これは同地の古代建築様式ヌラーゲの形に則ったものだという。俗歌と聖歌という対照的なレパートリーを半数ずつ取り上げたパフォーマンスは、いわゆるリード・ヴォーカリストの豊かな声量とメンバーの歌唱テクニックが圧巻で、感銘を受けた。