Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
久しぶりの吉祥寺ライヴ
2007年06月15日
吉祥寺はレコード店、ジャズ喫茶、ライヴ・ハウスが揃っていて、若者の人気が高い街だ。しかし都心に住むぼくにとっては特別な目的がないと足が向かない街。今夜は本当に久々に吉祥寺を訪れた。まずディスクユニオンへ行く。ここは他のユニオン店に比べると面見せの什器が充実していて、新譜のボリューム感がある。いつもならチェーン店系のそば屋で胃袋を満たすのだが、せっかく吉祥寺に来たからということでカレー店に入る。キーマーカレー900円を注文。まあまあか。その後「Strings」へ。西山瞳トリオを観るためである。関西を拠点に活動する西山はこのライヴ・ハウスを東京でのレギュラー・クラブにしていて、常連客もついている。店内に足を踏み入れると、すでに満席の状態。キャパシティが約40名なのでそれも当然か。壁に貼られているスケジュール表を見ると、著名ミュージシャンの出演予定が並んでいる。こじんまりとしているが、ミュージシャンにとっては演奏しがいのあるクラブということなのかもしれない。
今夜の西山は昨年リリースしたデビュー作の収録曲には見向きもせず、新曲を中心にプログラムを構成した。それらのいくつかは来月にストックホルムでレコーディングが予定されているセカンド・アルバムの候補曲で、ファンには嬉しい選曲となった。前回観たステージに比べると、テンポの速い楽曲が増えていて、これはアドリブに没入すると等身大以上に力を発揮する西山の本領がそうさせているのではと思った。エンリコ・ピエラヌンツィ譲りのメロディ・センスを聴かせながらも、アドリブ・パートではインプロヴァイザーとして底力を全開。新加入のベーシスト坂崎拓也とのコンビネーションも良好で、先日フィンランドのニクラス・ウィンターGに参加するなど活動の幅を広げるドラマー清水勇博の豪腕も光った。この東京での拠点をさらにキャパシティ拡大することが、今後の課題であろう。西山は女性ピアニスト3人が出演するイヴェント「Jazz Complex」を9月に神戸で主催する。関西から世界へとジャズを発信しようという心意気は素晴らしい。西山瞳、要注目のピアニストである。