Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
感動の輪が広がる話題の邦画
2007年05月28日
リリー・フランキー原作の映画『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』を観た。ベスト・セラーを記録した原作本はスペシャル・ドラマ?連続ドラマとTV化され、舞台化も決定している。ぼくは原作を読んでいないし、TV版も観ていない。舞台に行く予定もない。では何故映画版に行ったのかというと、松たか子が出演しているからなのであった。物語の筋は大まかにわかっていた。しかし実際に映画を観て、予想とは異なる部分で驚いた点が随所にあったのである。原作者のリリーさんは1963年生まれで、物語の半分は生まれ育った九州が舞台。
ぼくは彼よりも3歳年長で、東京生まれの東京育ちという違いがあるが、子供時代のエピソードに数多くの共通点があった。それが驚きだったのだ。母親の内職、プラッシー、両親の煙草、チープなドライブ・ゲーム・・・次第に自分の子供の頃の記憶が甦ってきて、スクリーンを観ながら別のストーリーが同時進行し始めた。ボクが上京してからの物語にも、自分と重なる点がいくつかあって、これには参った。オダギリジョー演じる主人公の恋人役であるたかちゃんは、始まってからしばらく経ってようやく画面に登場。入院中のオカンに語りかける長回しのシーンがハイライトとなった。それにしても抗がん治療に苦しむオカン役の樹木希林の壮絶な演技には圧倒された。