Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

ミュージック from フィンランド

2007年05月26日

 パーティー、トレード・ショウと進んできた「フィンランド・フェスタ・イン・東京」。昨日はロック?メタル系のバンドが出演するライヴが新宿で行われた。本日はジャズ・アーティストのライヴが「新宿ピットイン」で昼夜2公演開催。午後3時からの昼の部は、マキガミサンタチ+サム・ベネットがオープニッグ・アクトを務めた後、フィンランドからやってきたメムノンが登場した。電気カンテレ奏者のエヴァ・アルクラと、サウンドデザイナー(laptop)のヴィレ・ヒュヴォネンの2人によるユニットだ。以前原宿で彼らのステージを観たことがあって、フィンランドの伝統楽器を自分流にアレンジしてコンテンポラリー・ミュージックを創造する独自の姿勢が印象的だった。今日は約40分間、ノンストップのパフォーマンスを披露。ステージ後方に映像を写し出すステージは、ぼくがこれまで「ピットイン」で体験したことのないもので、次第に東京からフィンランドへ自分が移動しているような感覚にとらわれた。次に登場したのはヤルモ・サーリ・ソル。ワンマン・ギター・バンドと呼ばれるサーリは、ステージにサウンド・モデリングラックを用意して音を重ねながら、バンド・サウンドを作りこむライヴ・パフォーマンスを得意とする。2年前にヘルシンキに行った時、深夜のライヴ・ハウスで初めてサーリのステージを観た。その時の印象に比べると、今日はやや大人しかったかもしれない。  

 サーリの娘が父親の名前を連呼する声のサンプリングを、最初と最後に流して、パフォーマンスに物語性を加えた。 夜の部は太田恵資(vln,vo)と佐藤正治(per,vo)のデュオが露払いを演じた後、ティーム・マットソン5が登場。昨年リーダー作をリリースしたマットソンは、ファイヴ・コーナーズ・クインテットに代表されるハードバップ・ベースの新世代ミュージシャンの1人に位置づけられる。演奏はマイナー調のナンバーが多くを占め、60年代のマイルス・クインテットを消化したバンドの音楽性が浮き彫りになった。本日トリを務めたのはアラマーイルマン・ヴァサラット。tb,ss,p,cello,el-cello,dsからなるセクステットだ。ベーシストが不在の代わりに、チェロが2本というユニークな編成。しかし彼らがユニークなのがそれだけでないことが明らかになるには、さほど時間がかからなかった。母国の伝統音楽に立脚しつつ、クレヅマーの要素も感じさせながら、観客を笑わせるショーマンシップも見せてくれたのである。ほとんどの観客が彼らを初めて観るはずなのに、これほど客席が沸いたことが驚きであり収穫だった。しかも普段の「ピットイン」の客層とは異なり、若い女性客が目立ったことを特筆したい。客席の喫煙率が低かったことは、同店の新しいお客様が生まれていることと、ヨーロッパ・ジャズが確実に浸透している現実の証だと思った。

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