Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
米国の名ピアニストが横浜を再訪
2009年10月09日
今年65歳を迎えるビル・メイズは、ニューヨークを拠点に活動する白人ピアニスト。ピアノ好きの間では、その確かな実力が認知されている。今夜は横浜・桜木町の「Five Stars Records」にトリオで出演した。同名のレコード・レーベルも運営するFive?からは、メイズ参加のマティアス・スヴェンソン作が今春リリースされており、ライヴとレコーディングの両面で関係を築いている。同店は1Fに店舗を構えているが、同じビルの4Fでもライヴを開催することがあって、今夜は4Fでのステージとなった。初めて訪れた同店は、入り口で靴を脱いで入場するスタイルで、まさに住居をライヴ・スペースに変えたもの。ホーム・コンサートの趣は、ビル・エヴァンスが晩年にドイツで行った、誕生日前日のプライヴェート・ライヴを想起させた。今夜の演奏はレコーディングを兼ねたもので、スタンダード・ナンバーを中心とした2セットのプログラムとなった。ドラムスのジョー・ラバーベラは前述のスヴェンソン盤でメイズと共演していて、今夜も良好なコンビネーションで共鳴。ベーシストを務めた川村竜はまだ20代の若手ながら、確かな実力の持ち主で、バール・フィリップスから譲り受けたというウッド・ベースが円やかな音色を響かせた。メイズは「ゲット・アウト・オブ・タウン」でヴォーカルも披露。インティメイトな空間で味わうライヴは、この上なく贅沢だった。終演後にラバーベラと談笑。ビル・エヴァンスのラスト・トリオで活躍したドラマーとの初対面に、感慨もひとしおであった。