Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

新年異例のクラブ・ライヴ

2010年01月09日

 複数のプロジェクトを同時並行で精力的に展開させているピアニスト/作曲家の藤井郷子。4タイトルの新作を同時にリリースし、その4バンドが一挙に出演するライヴが、新宿ピットインで開催された。通常の同店では昼の部と夜の部に分かれているのだが、今日は午後4時スタートで、休憩をはさみながら4バンドが連続的に演奏する、異例のスタイルだ。トップ・バッターは新作『シロ』を引っ提げたガトー・リブレで、藤井がアコーディオンに専念するカルテット。アルバムのキャッチ・コピーに「美しくも哀しい曲、楽しくも切ない曲」とある通り、藤井の素朴でメロディアスで静の部分を中心としたサウンドだ。2組目はドラム入りカルテットのファースト・ミーティング。新作『カット・ザ・ロープ』のレコーディング・メンバーに加えて、米国から特別ゲストのネルス・クラインを迎えたツイン・ギター編成だ。クラインは独自の小道具やアタッチメントを使用してノイジーなサウンドを生み出し、ケリー・チュルコ(g)との相乗効果を生んだのが収穫。3組目のma-doは通常のトランペット+ピアノ・トリオのカルテットだが、藤井によれば共演者を決めたらこの編成になったとのこと。第2弾となる『デザート・シップ』は昨年の欧州ツアー中に、ポーランドで吹き込んだ新作だ。編成はオーソドックスでも、生まれる音楽は藤井を始めとするこのメンバー独自のものである。トリを務めたのは新作『ザコパネ』をリリースした藤井郷子オーケストラ東京。大編成だから当然、アンサンブルの決め事があるわけだが、それにしてもバンドの空気感が自由だ。そのことがセオリーにとらわれないエネルギーを生む原動力に繋がっているのだと思う。トロンボーンを江戸の火消しパフォーマンスに見立てるなど、笑いを誘う個人技も盛り込んで観客を楽しませた。超満員となった場内の雰囲気がこのイヴェントに対する関心の高さを表した。ミュージシャンにとっても大きな手ごたえがあったに違いない。演奏だけで4時間超のマラソン・コンサートに達成感を共有した。

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