セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
2008年08月10日
カサンドラ・ウイルソンといえば、エラ+サラ+カーメン以来脈々と続いてきた黒人女性ジャズ・ヴォーカリストの系譜に、90年代に突如風穴を開けた革新者。ジャズ以外の音楽ファンにも訴求力がある点で、別格的な存在でもある。今回は新作『ラヴァリー』のリリースと同じタイミングでの来日となった。同作が久々のスタンダード集であることを含めて、時代の節目を飾った過去の作品に比べるとパンチが欠ける印象があったし、ぼくの周囲でも同じような意見が聞かれた。アルバム・カヴァーで微笑むカサンドラの姿も、どことなく「丸くなったな」との印象があって、年齢も50代に入ってギア・チェンジなのかなと邪推したりもした。ところがどうだろう。“ブルーノート東京”でのステージは、最新作で抱いたイメージは完全に払拭し、昔も今も変わらない魅力を強く印象付けてくれたのである。カサンドラはアフリカン・アメリカンであることを意識しながら音楽活動を続けてきた。アルバムではやや希薄になっていたこの部分を、ステージでは前面に表現。デビュー時からのファンを、これぞカサンドラと再認識させてくれたのが最大の収穫だった。声だけで納得させる力の凄さ。邦人を含めて、ジャズ・ヴォーカルというジャンルを再考させられた一夜であった。
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